アトリエだより

育てる人は花の下僕

「植物を育てています」と話すと「買うより育てたほうがフレッシュだし、長持ちしそうだし、好きな時に切って飾れるね」と言われるんですが、実は… 違います。

自分が「育てる人」になると、庭や鉢で眺めていた方が開花をより長く楽しめるので摘まなくなるのです。そして雨が降ると花がダメになってしまうならばと、切って部屋にいける。天候と植物のご機嫌をうかがう花の下僕になります。

下僕ですからお手入れや栄養もせっせとあげないといけませんし、外敵を駆除するために日夜奮闘します。ロザリアンの多くがこんな感じではないでしょうか。

花海棠

そもそも花を切るって特別な儀式なんですよね。神様への捧げものであり、人間にとっては誕生、結婚、葬式といった人生の大事に花の命を摘み、飾る。尊い行為なのだと思います。
遥かな古代では香りも重要で、亡くなった人にハーブのネックレスで飾ったりお棺に香草を添えるのは防臭の役目もありました。洞窟の墓からシソ科の植物が出土した話もありました。

中世以降は体臭や防虫としてのハーブの活用、宗教的な意味合いを持つやユリなどの球根植物の研究、貴族の保護によるバラの研究、それらが現代に受け継がれています。

クレマチス

花を仕事とする場合には作業として割り切るので、もったいないやかわいそうなどと言ってられませんが、個として植物に対峙する際には、時代劇じゃないですけど「お命、頂戴します」と心の中でひそかに思っています。

だって花はすべてをわかってそうじゃないですか?

テータテートとクリスマスローズ